四季折々(日々彦の文芸欄)

日々彦の詩歌句ノート、随筆、講演、紀行文など

◎プレバト俳句2020年度優秀句と冬麗戦2021+8年間の秀句BEST50(日々彦備忘録)

〇1/14プレバト。今回は、2020年詠まれた全314句から夏井先生が10句の優秀句を選び、それらを詠んだ芸能人10名による冬の俳句タイトル戦「冬麗戦」。

 

▼2020年優秀句TOP10(放送順)

・4.09:不動産屋・若芝に大の字身ひとつの移住 中田喜子 春光戦④決勝3位

夏井評:《新しい表現ではないが「身ひとつ」でいろんなことが言えている。特に「若芝」がいい。若者が単身で意欲を出して引っ越して来たなど、いろんなことが想像出来る句》

 

・まるでシンバル移り来し街余寒 東国原英夫 春光戦④決勝1位

夏井評:《見事な一句。「シンバル」は、騒がしく、すごい音で、不安を掻き立てる。「夜寒」という季語の置き方からその空気感が強められ、「シンバル」によって句全体にさらにその雰囲気が醸し出されてくる。》

 

・7.23:封筒・二枚目はベランダで読む手紙かな 村上健志 炎帝戦④予選B1位

《一枚目を読みその内容の重さを感じ、場所を変えて二枚目を読む、その時の心の動きがよく表現されているように思う。》

 

・8.06:ポイントカード・炎天のミミズ診察券のシミ 立川志らく 炎帝戦④決勝2位

夏井評:《句またがりの対句表現の型。「炎天」「ミミズ」はどちらも夏の季語を重ねた。一般に、季語となる生き物は片仮名で表記しないが、意図的だと伝わる。干乾びて死にかけているに違いないミミズ。そこに無関係のものを取り合わせ、通院している患者の診察券のシミを持ってきた。生と死は大袈裟に表現しがちだが、この句の取り合わせはさりげない。「ミミズ」「シミ」の韻も考えた。》

 

・8.13:本棚・読み終へて痣の醒めゆくごと朝焼 梅沢富美男 掲載決定

夏井評:《「読み終へて」で時間経過がわかる。なんで痣?と思い朝焼けの比喩だとわかった瞬間のはっとする驚き!読み終わった後の心情の痣とが響くようでもある。》

 

・謎解きの頁に蜘蛛は果ててゐる 森口瑤子 3級へ1ランク昇格

夏井評:《頭の表現で推理小説だと伝わる言葉の経済効率が上手い。場所の助詞「に」からクローズアップされる映像になる。助詞「は」の強調によって蜘蛛が「逃げたのか?」などどんな状況かを読み手が興味を持ち始める。下五の淡々とした描写が良い。》

 

・9.24:文房具・秋雲に名をつけ窓に貼る付箋 藤本敏史 秋の他流試合SP第4試合

夏井評:《とても可愛らしいく、作者の人柄が表れている。雲が色んな形に見えるという句はあるが、雲の名前を付箋に書いて貼るという点にオリジナリティがある。色とりどりな付箋が透明なガラスに貼られ、本人も言った遠近感や光があり、見事に秋の雲を描いた。》

 

・(前書き・2020年)体温だけ記す九月の予定帳 横尾渉 秋の他流試合SP第2試合

夏井評:《前書きを使いこなすのは難しいが、今年ならではの効果がしっかりある。「だけ」もうっかり使うと散文的で趣がないが、特殊な事情を書く言葉として機能した。2020年9月は仕事の予定が何も入らず体温だけが記されていくと。シンプルだが見事。》

 

・11.5:ポンプのノズル・夏の海を描くスプレーの秋思 千賀健永 金秋戦④予選C1位

夏井評:《「夏の海」から始まるため、これが季語だと誰もが思うが、「描く」で虚の季語だと初めて分かる。水彩画か油絵かと思うと「スプレー」で、大きな画面を思い、壁面画やシャッターアートかと思わせる。最後の着地が良く、「スプレーの秋思」は擬人化をした。「秋思」はセンチメンタルになり、感情が崩れやすい。名詞止もピシッと止めようと工夫した。破調・季重なり・擬人化・名詞止めと全部意図を持ってやっている。》

 

・11.12:7時過ぎの時計・痙攣の吾子の吐物に林檎の香 千原ジュニア 金秋戦④決勝1位

夏井評:《「吐物」の後の「林檎の香」の展開に驚く。生々しいリアリティーで、香りがした途端、食欲のない子にすりおろしたのか、大好きな林檎なら食べれるのではないかと親心を思わせる。吐物からの展開に親の切なさも出る。最後の問題。「林檎」の季語は吐物のため、確かにおいしそうではないが、この林檎の存在感は抜き差しならないものがあり、季語と認めないと主張する人に対して、逆に「無季」と言い切っても良い。このリアリティーの前に、この人が真っ当な親であること。しかもこの句は「吐物や」なら終了していた。》

 

 

▼『冬麗戦』題・「輪ゴム」

1位(優勝)・風花へしゅぱんしゅぱんとゴム鉄ぽう 森口瑤子。

夏井評:シンプルでなおかつ映像が浮かび、そういう句が読んでいて気持ちが良い。「へ」もとても良かった。風花に向かって何かが動いていると分かる。何だろうと思うと、「しゅぱんしゅぱん」というオノマトペしか出てこない。一体何か?と興味を持って読み進めると「ゴム鉄ぽう」が出てくる。当たるはずもないのにしゅぱんしゅぱんとやっている。この軽やかなオノマトペが「風花」と飛んでいく「ゴム鉄ぽう」の感触とを上手に繋いでいる。

 

2位・一月やゴム動力のプロペラ機 フルーツポンチ村上健志

夏井評:《季語は動く。「三月」なら春の明るさ、「六月」なら梅雨の湿っぽさ、「八月」なら終戦や原爆のイメージがあり、「プロペラ機」が他の意味を持ち始める。「一月」を自信を持って選ぶことが作者の一番大事な決断。プロペラ機という物を提示しただけだが、新年の気配を含んだ1月の空へ向かってゴムを巻く動作や指の感触を読み手は思い浮かべる。》

 

3位・無影灯下腹に冷たい何か 、東国原英夫

夏井評:《「無影灯」だけで手術室だと分かるこの言葉の経済効率は悪くない。「下腹」と具体的な部位を持ってくる。その後に「冷たい」「何か」と畳みかけてくる。メスか、ひやりと急に恐ろしくなったのかもしれない。本人が季語と認識して使っているならそれでよいと思う。ただ、季語が無いと言う人も一定数はいる。読み手が季語と認識するか否かは託しても良いのではと思う。東さんのバランスで味わうしかない。》

 

 

▼(2020年6月25日)〇プレバト俳句で8年間に詠まれた合計1719句から夏井いつきが厳選した秀句BEST50を発表する特別編。天1句、地1句、人3句、秀逸句15句、優秀句30句。

 

「天」題:桜と富士山 『花震ふ富士山火山性微動』 東国原英夫

夏井評:東さんは発想でどんどん攻めてくる人。ここまでやられたら負けたと思った。

「地」題:横浜 スケートリンク 『銀盤の弧の凍りゆく明けの星』 梅沢富美男

夏井評:技術的にも表現できている世界も抜きんでている。見事なドキュメンタリーな映像をたった17音でやっている。技術的な高さが半端じゃない。

 

「人」題:梅雨明けの銀座 『エルメスの騎士像翳りゆき驟雨』 村上健志(フルーツポンチ)

夏井評:映像の切り取り方を完全に掴んだ実感が凄くあって嬉しかった。エルメスの像が翳っていき、何だ?と思ったら夕立を指す季語「驟雨」が出てくる。この段階で、見上げる視線が映像として確保されている。大事な俳人としてのポイントになる句ではないか。

・題:夏休みの宿題 『マンモスの滅んだ理由ソーダ水』 藤本敏史(FUJIWARA)

夏井評:メモリアルな一句。藤本さんはこれからドンドン成長した。大した男。

・題:年末年始の駅弁売り場 『右肩に枯野の冷気7号車』 皆藤愛子

夏井評:描き方が五感に訴えてくる。五感を再生してくれる力を持った句。読んだ瞬間に7号車に座っている車窓から1号車がカーブを描いて先に走っている光景が見えた。

 

「秀逸句15句」

・題:お鍋 『庖丁始都心は計画運休』 横尾渉(Kis-My-Ft2)  20/1/3

夏井評:「計画運休」はおおよそ詩になりそうもない。その言葉を取り合わせて詩にした。

・題:雪と青空 『雪原や星を指す大樹の骸』 千賀健永(Kis-My-Ft2)  18/1/4

夏井評:いつこんな句が出来る子になったんだろうと思って驚いた。

・題:夕暮れの商店街 『もてなしの豆腐ぶら下げ風の盆』柴田理恵 17/8/24

・題:満開の桜『野良犬の吠える沼尻花筏』 東国原英夫 17/4/6

・題:結露『凍蠅よ生産性の我にあるや』 東国原英夫 19/1/3

・題:不動産屋さん『まるでシンバル移り来し街余寒』 東国原英夫 20/4/9

 

・題:冬の新宿駅『テーブルに君の丸みのマスクかな』 村上健志 16/11/24

・題:夏の波紋[緑の映る水紋]『行間に次頁の影夕立晴』 村上健志 19/7/25

 

・題:箱根のススキ『羊群の最後はすすき持つ少年』 藤本敏史 16/10/27

・題:海『セイウチの麻酔の効き目夏の空』 藤本敏史 17/6/29

 

・題:ラジカセ『旱星ラジオは余震しらせおり』 梅沢富美男 18/8/9

・題:郵便ポスト『廃村のポストに小鳥来て夜明け』 梅沢富美男 18/9/27

 

・題:春の旅行計画 『道化師の ギャロップのごと 牧開』 鈴木光 19/3/21

夏井評:洋画のような感じで見えてくる。大した子が出てきた。

・題:紙袋 『万緑に提げて遺品の紙袋』 春風亭昇吉 20/6/4

夏井評:季語と物とで勝負してくる。本物が来たと思った。

・題:年末の満員電車『連覇のさきぶれ沸き立つ初電車』 中田喜子 18/12/27

 

「優秀句30句から私が印象に残った句」

・題:紅葉 『紅葉燃ゆ石見銀山処刑場』 東国原英夫 17/10/12

夏井評:何より「紅葉燃ゆ」が見事。戦国~江戸時代にかけて世界有数の採掘量を誇った石見銀山で、当時盗みを働いた鉱夫たちが銀山近くの処刑場で罰せられた逸話を「紅葉燃ゆ」の比喩で表現。世界遺産になってから「負の遺産」である処刑場の案内が消えたことを語り、処刑者の恨み辛みが何百年と残ることを俳句を通して後世に残し伝えていく姿勢を夏井先生も「カッコええ」と絶賛した。「銀」と「紅葉」の色彩的対比も高評価。

 

・題:夏の太陽 『光束ねるごと日焼子ら走る』 中田喜子 18/8/2

夏井評:この句は前半の比喩の勢いがいい。抽象的なイメージ。読み手の脳の中に光が束ねられるイメージが出現する。その奥から日焼けした子どもたちが飛び出てくる。「ら」の複数もいい。ここでしっかりとした映像が出てくる。最後に「走る」という動詞で、夏の光を弾き飛ばすようにこっちに走ってくるという印象がある。破調をここまで使いこなしたらこれは見事。

 

・題:天気予報 『花粉来て獺の祭りのごとちり紙』 梅沢富美男 20/2/20

夏井評:この句と出会った時、微かな尊敬の念を抱いた。

・題:夏の波紋[緑の映る水紋]『鯉やはらか喜雨に水輪の十重二十重』 梅沢富美男 19/7/2

・題:不動産屋さん『1DK八重桜まで徒歩二分』 藤本敏史 20/4/9

 

・題:年末の満員電車 『吊り革の師走遠心力に耐え』 ミッツ・マングローブ 18/12/27

・題:郵便ポスト 『出席の葉書投函秋日和』 千原ジュニア  18/9/27

・題:ATMの行列 『色変えぬ松や渋沢栄一像』 立川志らく 19/10/31

夏井評:覚悟と意思を持って2つのものを取り合わせる。まさにこれが俳句の基本。

 

・題:紅葉の絶景 『紅葉ふるコントラバスを弾くはやさ』 石田明  18/9/27

夏井評:この人、何か違ったものになる気がした。動きの対比がさり気なく出ている。

・題:江ノ電とあじさい 『あじさいや三日続けて昼は蕎麦』 武田鉄矢 16/6/16

夏井評:俳句の基本の型をきちんと押さえている。肩の力がどこにも入ってない。

・題:冬の新宿駅『職質をするもされるも着膨れて』 的場浩司 20/1/23

 

※参照:「プレバト!!で芸能人が詠んだ俳句を徹底紹介するブログ」

https://haikuvariety.blog.fc2.com/blog-entry-46.html