四季折々(日々彦の文芸欄)

日々彦の詩歌句ノート、随筆、講演、紀行文など

◎前傾姿勢から離れて。「四季折々」(2020年5月29日~6月4日)

〇病とともに「四季折々」(2020年5月29日~6月4日)

(28日)〇これまでの社会の傾向として。

「明日に向かって」、前のめりに予測を立て、計画を立て、見込みをはかりつつ、次々に手を打っていく。例えば、子どもの将来のためとして、いい会社、いい学校、そのために、小さい頃からの塾などにせっせと通わせる。など。

 日常的に、「計画を実現するため」「利益を上げるため」「作物を沢山収穫するため」「目的地に早く着くため」「国や、会社、共同体のため」等々。

 まず目標を設定して、そこに至る最短・最適のルートを想定する、できる限り効率的に、楽に、短期的に実現するためにエネルギーを使う。

  この辺りのことを、臨床哲学者・鷲田清一は,
「現代に働く多くの人々が日々使っている言葉を列挙してみる。プロジェクト(project)、利益(profit)、見込み(prospect)、計画(program)、進捗(progress)、生産(produce)、昇進(promotion)。これらのビジネス用語の接頭辞になっている“pro”というのは、ギリシャ語で「前に」という意味を表す。つまり全て前傾姿勢なのである。」
(『「待つ」ということ 』角川選書、 2006年より)として、この前傾姿勢が、社会にはびこっているのではないかとしている。

・前のめりに歩く姿の脂汗

 

(29日)〇19日に日本プロ野球は開幕した。
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため史上初の無観客開催として3か月遅れの開幕となった。 無観客だが、打球音などがよく聞こえ、テレビで見ている分には、別の意味で面白い。
 カープの大ファンで、野球シーズンはJSPORTS1+2+3+4の契約をしている。今年はどのようになっていくのか、経過を楽しみにしている。
 いつも思うのは、正岡子規のベースボール短歌のおもしろさ。
「ひさかたのアメリカ人のはしめにしベースボールは見れとあかぬも」
「若人のすなる遊びはさはるあれどベースボールに如く者あらじ」
「球と球をうつ木を手握りてシャツ着し見ればその時思ほぬ」
「九つの人九つのあらそいるベースボールの今日も暮れけり」
「いまやかの三つの塁に人満ちてそぞろに胸のうちさわぐなり」
「ベースボールうちはつす球キャッチャーの手にありてベースを人のゆきかてにする」
「うちあぐるボールは高く雲に入りて又落ち来る人の手の中に」
・雲の峰投げる漱石受ける子規 

 

(30日)〇「人類の放漫経営のつけ」が重く。

「待つ、立ち止まる、振り返る」そして、考えたり、見直したりすることよりも、前に動いている方が、何かをしている、積極的に生きていると思いがちである。また、方向がはっきりすればするほどエネルギーも湧いてくる。

 最近の新型コロナウイルス問題やきな臭い世界での出来事など、今後の社会の発展を決定的に阻害する可能性のある様々な問題が、山積み状態に存在していて、それぞれが相互に関連しあって顕在化しているのではないだろうか。

 前傾姿勢で遮二無二に進んできたこと、また、自分にも身についているだろう時代によって形成された価値観によって、過去からの様々な「人類の放漫経営のつけ」が重くのしかかってきている気がする。

 だからといって私のやれることは、身近に起こることに誠実であろうとするだけだ。どこまでやれるか心もとないが、そして、遠ざかっていく過去の中に、私たちの課題を見直していく多くのことがあるのではないかと思い始めている。悲惨な目に会いながら、時代の波にもまれながら、貴重な問題提示をしている先人がいて、その先人たちの貴重な提言を援用しながら、そのことをどれだけ自己に返すかという意識を維持しながら、振り返っていくことを大事にしておきたい。 

・夏祓待つ立ち止まる振り返る

 

(7月1日)〇孫の動きについていけなくなる。
 孫を伴って散歩するとき、ジジババに両手をもってもらうのがお気に入りで、両手を差し出してくる。そこでぶら下がったり、引っ張たりして動きも激しくなってきた。
 それについていくのがだんだん難しくなり、手を放してしまう。孫はアレッという表情になるが、妻は心得ているので、その場は簡単に収まる。

 孫を見ていくのは面白いし、座って対応することはできるので無理がないところで関っていくが、その動きにはついていけなくなってきた。

 普段、症状のことを考えて、出来る限り歩いたり動いたりするが、疲れが大きくなっている。散歩、用事などはほとんど妻を伴っているが、自転車、自動車に対する緊張が増してきている。

 身体や状況は、老化・疾病・事故などによって次第に変化していく。いずれのときも、刻々と変わりながら生きている状況との平衡状態を保とうとする働きをしているのであり、それが生命活動である。今後妻や孫との関係性の中でどのような関わりができるのだろうか。

・手をつなぐジジと孫との茅の輪かな

 

(2日)〇退院後7ヶ月目の脊髄小脳変性症の診察を受ける。

 今日は定期的な検査で、いつものように、この症状や小脳萎縮に関わる検査方式があり、15分ほど手の動き、各種の立姿、歩行動作を確認し、主治医の見立てでは、症状はあまり変わっていないという。そして、それ用の薬を3が月分調達してもらう。

 元来薬に関してはマイナス的感情が強く、ほとんど使わないが、この症状に効果があるとされていて、主治医のすすめで服薬している。

 その効果はあまり期待していないし、効くということは逆に体の持つ自然治癒力に対するデメリットがあると思うが、それ以上考えるだけのものがないこともあり、今のところ一応主治医に信を置いている。

 それにしても、特定医療費(指定難病)受給者なので、経費はあまりかからないようになっているのは有難い。おそらく1日2回で千円近くの薬価3か月分と診療代合わせて2500円で済んでいる。

・老いつつもこころ健やか岩清水

 

(3日)〇薬や医療依存体質
 人は、だれでも本来的に体の状態を整えていく力、自然治癒力、免疫力などが備わっていて、その力を引き出す、あるいは維持することが健康を保つ大きなポイントとなる。それを阻害する要因に、健康にまつわる医療、薬、食などの思い込みの観念による場合が多い。

 福祉、介護関係の仕事をしていて、当事者の服薬している薬の多さに驚かされることがある。高齢化社会に伴う医療費の多寡、それも増え続けていることが社会問題になっている。
 WHO(世界保健機構)では、必須薬剤(エッセンシャルドラッグ)をおよそ300~400品目としている。国際的に効能が認可されているのが500種類。日本で許可されているのは17,000種類で、毎年増え続けているそうである。

 一方、かなりの人々が医療技術や薬の開発により数多の恩恵を享受している。
 強い喘息の発作にステロイド剤を使用することで、気管支の炎症、呼吸困難から意識混濁、窒息死を防ぐことができる。
 日夜、苛酷な日常業務を担っている、医療関係者も少なからずおられる。私や身近な人のことを振り返っても、そのことは充分に感じている。

 大体どんなことにもメリットとデメリットがあるが、医療技術や薬への依存体質がもたらす弊害は、生老病死の人が生きていく営みに密接に繋がっているので、自戒を込めて。負の要因についてきちんととらえておくことが必要だと思っている。

・七月のいきる力のピッチング

 

(4日)〇熊本豪雨で球磨川が広範囲で氾濫。
 停滞する梅雨前線の影響で熊本県南部を襲った記録的豪雨で氾濫した球磨川は最上川や富士川と並ぶ「日本三大急流」の一つとされ、不知火海に注ぐ1級河川。過去にも繰り返し水害が起きてきた。この県南部を流れる球磨川が広い範囲で氾濫し、沿岸の自治体で土砂崩れや浸水被害が相次いで発生、甚大な被害が出ている。
 2年前にも、別称西日本豪雨、2018年(平成30年)6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で記録された、台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨。この豪雨により、西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、死者数が200人を超える甚大な災害となった。
 また、全国で上水道や通信といったライフラインに被害が及んだほか、交通障害が広域的に発生している。平成に入ってからの豪雨災害としては初めて死者数が100人を超え、「平成最悪の水害」と報道された。さらに、昭和にさかのぼっても1982年に300人近い死者・行方不明者を出した長崎大水害(昭和57年7月豪雨)以降、最悪の被害となった。これに関しては、渦中にあった友人が、今だに影響を受けているという。
 これらのことは、日本の地形上起こりうることで、文明化により、被害も大きくなってきたように思う。 

・夏出水総出でしのぐ秋津島